3.その後

 

 

どうも。無事チェリーを卒業した、桜です。

俺とカリームは、順調にやっている。喧嘩もしないし、仲良くやっている。筈だった。

いつもの様に、バイト終わりにカリームが俺の家に来た。明日は休みだからって、一緒に飲み明かす為、と言うのは口実で、結局の所、予定は未定であって、その目的も変わる。

次の日はバイトも学校もなくて、好きなだけカリームと居られる、と思ったら、俺はいつも以上に飲んでしまって。酔っ払って、カリームにくっついて、甘えて、そのままそんな流れになって。

ベッドの上で、快感に溺れた。カリームは胸を責めるのが好きで、俺の突起を執拗に舐めて、摘んで、捏ねくり回す。俺も、嫌いじゃない。寧ろ、カリームと付き合って、その気持ち良さに目覚めたくらいだ。

そうしたら、吸い付きながら、カリームが言った。

「サクラさんの胸、チェリーみたいに、赤くて、膨らんでいて、素敵です。」

その言葉に、俺は固まった。

夢中だったカリームを引き剥がし、自分の胸を見る。

乳首が、ぷっくりと、赤く腫れている。まるで女の子みたいに。いや、正確には、女子の胸なんて、生で見た事はないのだが。

震える指で、そっと触れてみる。ピリッとした感覚が走った。

まずい。これは、本当に、まずい。

「サクラさん?」

カリームが、心配そうに俺を覗き込んだ。胸に触れようとした手を思わず掴んで、止める。

「サクラさん。どうしましたか。」

「えっと、」

「気持ち良く、なかったですか。」

そんな事はない。寧ろ、気持ち良すぎた。だから、まずいんだ。

「ごめん、カリーム。」

そのまま布団を被る。

「今日は、もう終わり。」

カリームの顔が、青くなっていく。

「サクラさん。ごめんなさい。僕、何か失敗しましたか。」

そうじゃない。そうじゃないけど。

「サクラさん。返事、下さい。」

俺は、布団の中から小さい声で答えた。

「カリームは、悪くないよ。ただ、ちょっと気分が、」

「気分、悪いですか。」

心配そうな声が聞こえる。

「気分悪いって言うか...

布団の端から、カリームを見ると、ものはまだ、大きく反り返っている。俺のものも、まだ勃ったままだ。このままでは、お互いに生殺しだ。

俺は、ゆっくり布団から起き上がる。

「ごめん。大丈夫。でも、」

ゆっくり息を吸う。

「今日は、胸はもう触らないで。それで良いなら、続きやろう。」

カリームは、不安な顔をしていたが、小さく頷き、胸には触らず、続きを開始した。 

俺は、カリームの圧迫感に声を出して身を委ねながら、働かない頭で必死に考えていた。

 

翌朝、隣で寝ているカリームを起こさない様に、そっとベッドから降りる。

確か、ここにあった筈、と棚を探す。

あった。絆創膏。それから、怪我をした時に傷に塗る、軟膏も見付けた。

軟膏はやめておこう、と思ったが、念の為、鞄に入れた。少しでも触れたり、刺激しない方が良い。

洗面所に行き、俺はTシャツを捲り、胸を出す。其処には、昨日よりぷっくりしている気がする、赤みを帯びた突起。少し触れてみると、声が出そうになった。慌てて口を押さえる。

鏡を見ながら、出来るだけ一度で終わる様に、ゆっくりと絆創膏を貼っていく。

何とか一枚、と胸を撫で下ろすと、ベッドの方でカリームの声がした。

「サクラさん...。」

驚いて、暫く固まっていたが、どうやら寝言だったようだ。俺の夢、見てるのかな、なんて思うと愛おしい。

俺は静かに、深く息をして、もう一枚をゆっくり貼った。

出来た。これなら、大丈夫だ。

今日は休みだから、カリームとデート。もし仮にTシャツが擦れても、これなら腫れた乳首が感じる事はない、筈だ。

ショッピングモールで、カリームが勉強に使いたいという、日本語のテキストを買う。それから、靴を見て、服を見て、昼飯を食べて。

時間が経つにつれ、俺は頭がぼーっとしてきた。顔が火照る。胸が、痒いような、熱いような、じんじんとする。

「カリーム、ちょっと、」

隣を歩くカリームに、声を掛ける。カリームは、俺の顔が赤いのに気付き、心配そうに覗き込む。

「サクラさん、大丈夫ですか。」

「う、うん。ちょっと、トイレ行ってくる。」

「一緒に行きます。」

「大丈夫。カリーム、そこの雑貨屋見たいって、言ってたじゃん。俺、その間に行ってくるから、心配しないで。」

カリームを店に残し、俺は急いでトイレの個室に入った。

Tシャツを捲り、胸元を確認する。絆創膏が貼られた其処は、朝より膨らみ、汗ばんでいる。じわじわと熱が伝わり、触って欲しそうにピクピクしている。

少しだけ、とそっと指で触れてみると、全身に電気が走ったかのような快感。声が出そうになるのを必死で抑えた。

駄目だ。こんな所で、1人で、こんなところを触りながらするなんて。俺だって男だ。恥ずかしいし、何より、待たせているカリームに悪い。

半分勃ち上がっている下半身を鎮めようと、深呼吸をし、服を戻す。

何とか落ち着きを取り戻すが、個室を出て鏡を見ると、顔は赤いままだ。兎に角平常心を装おうと、冷たい水で顔を洗った。

雑貨屋の前にベンチがあったので、其処に座ってカリームを待つ事にした。カリームが来る前に、どうかこの顔が元に戻りますように、と念じながら。

しかし、カリームはこちらに気付くと、さっさと店を出て向かってきた。

いつもなら、直ぐに何でも気が付くカリームを格好良いと思うが、今日はもう少し時間が欲しかった。手には雑貨屋の袋を持っている。さっさと会計を済ませて、待っていたようだ。

「サクラさん、大丈夫ですか。」

隣に座りながら、カリームは心配の声を掛ける。

そっと肩に触れられ、また身体が火照ってきた。もう限界だ。白状した方が良い。

「カ、リーム、」

俺は震える声で名前を呼んだ。

「帰り、たい、」

涙目に、紅潮した顔。カリームは俺の様子に驚きながら、何かを察したように言った。

「分かりました。早く帰りましょう。」

ふらつく足元を、肩を抱かれて支えてもらいながら、帰路についた。

 

家に入り、ベッドに横になる。安心した。気持ちが少し楽になる。しかし、気を抜いたせいか、俺のものはジーパンの中で限界に膨らんでいた。

サクラさん、と心配そうに呼ぶカリームを引き寄せ、キスをする。教えてもらった、舌を絡ませる濃厚なキス。息継ぎに口を離し、恥ずかしいが、服を捲りカリームに見せた。

「どうして絆創膏、貼ってありますか。」

驚くカリーム。そりゃあそうだろう。昨日までは貼ってなかったんだから。

「全部カリームのせいなんだからな。」

俺は少し怒りながら言う。

「何故ですか。」

「胸ばっかり、弄るから、」

「敏感になって、しまいましたか?」

尋ねながら、絆創膏の上から爪で引っ掻いてきた。

「ひ、あっ、」

思わず出た声が、まるで自分ではないように思えた。それに気を良くしたのか、カリームは擦り続ける。

「あ、駄目っ、そんな、いきなり、」

「サクラさん、いつの間に、こんなにセクシーになってしまいましたか。」

カリームは、すっかり雄の顔になって、俺の胸を弄る。

「お、願い、蒸れてっ、痒くてっ、」

「ゆっくり剥がします。」

言葉通り、ゆっくりと、寧ろ焦らされているかのように、剥がされる。無事剥がし終わると、赤く膨れた突起を直接弾かれた。 

「は、んっ、」

「サクラさん、いつものチェリーと違います。いつもより、セクシーです。」

御託はいいから、

「早く、早く触って、」

「駄目です。」

何で、と涙目で訴える。

「赤くなっています。まずは、薬、塗った方が良いです。」

「軟膏なら、鞄に入ってる、けど、」

カリームは、俺の鞄から軟膏を取り出して、たっぷりと絞り出し、掌で延ばす。それから、胸をマッサージするかの様に、優しく塗り始めた。

「大切な所です。優しく、塗ります。」

「でもっ、こ、れ、は、」

焦らされている気分。もっと、思い切り摘んだり、捏ねたりしてほしい。軟膏で滑りが良くなった分、肝心の部分から逸れる。

焦れったくなって、下半身に伸びた俺の手をカリームが掴んだ。

「なっ、」

「駄目です。」

キスで口を塞がれる。片手は俺の手を押さえ、片手は胸を揉んでいる。

「おねがい、カリーム、俺、限界、触りたい、下、」

「駄目です。今日のサクラさん、とてもセクシー。だから、性器を触るのは、駄目です。」

その途端、突起を思い切り摘まれた。

「ひっ、」

「今日は、胸だけです。胸だけで、精液出せたら、ここに僕のを挿入れます。」

そう言って、ジーパン越しに後ろを撫でる。

「分かりましたか。」

「わ、かった、分かったから、早く、」

「ジーンズ、脱ぎません。サクラさん、性器触ってしまいます。裸になるのは、最後です。」

そんな、と言いかけると、再びキスをされた。口の中は舌で、胸は指で犯される。コリコリと先端を撫でられると、快感が押し寄せる。

「は、あ、」

浅く息をして、下を触らない様に我慢する。ベッドの上で俺に覆い被さる様な体勢で、カリームは突起を触りながら、口にしていたキスを首筋、肩、と下におろしていく。そして、胸。吸い付き、舐め回す。舌を使って、まるで飴を口に含んでいるかのように転がす。

「駄目、ダメダメっ、」

「駄目は、」

「わか、って、る、きもちいっ、から、」

びくり、びくりと身体が跳ねる。打ち上げられた魚みたいに、俺の身体は自分の意思とは関係無く動く。気持ち良くて、でも、こんな所を刺激されてる恥ずかしさで、頭が回らない。

突然、思い切り吸い上げられた。今迄のとは比べ物にならない刺激に、腰が浮く。ジーンズの股間部分に、じわり、と染みが出来た。

胸だけで、イってしまった。

深呼吸すると、冷静になる。途端に、その事実に恥ずかしくなる。

カリームを見上げると、あの悪戯っぽい笑顔。

「よく出来ました。」

大きな手で、頭を撫でられる。ふわふわした感覚。その開放感に流されそうになったが、俺は、はっとして、枕をカリームの顔にぶつけた。

「な、何だよ!よく出来ました、って!乳首だけでこんな、こんなんなっちゃうの、全部カリームが悪いんだからな!」

カリームは枕を退けて、俺を見る。

「でもサクラさん、とてもセクシーで、可愛かったです。」

「大体さあ!」

思わず声が大きくなる。

「男相手に、か、可愛いとか、綺麗とか、そう言う事、言うからっ、」

「嬉しいですか?」

「う、れしい、って言うか、だからっ、そうやって言いながら弄られるから、俺、」

「気持ち良いですか?」

俯いて、頷く。顔が上げられない。今の俺は、多分真っ赤だ。

「サクラさん。」

顎を持ち上げられ、カリームと目が合う。茶色の、綺麗な目。

「サクラさん、こんなに気持ち良いの、僕だけです。セクシーなサクラさんを知っているの、僕だけです。違いますか?」

...違わない。」

ニッコリと、子犬の様な笑顔。

「それなら、良かったです。」

カリームはそう言って、キスをしながら俺の服を脱がせた。

 

夜中に、目が覚めた。自分の胸をまじまじと見る。

軟膏を塗ったお陰か、胸の赤みが引いていた。

良かった、とほっとする。

横で寝ているカリームの頬に軽くキスをしながら、もう絆創膏を貼るのはやめよう、と固く誓った。

棚の上から、カリームが雑貨屋で買ってきた、カエルの置物が見ている気がした。