殺し屋×デモリーダー【短編3】

 

 

イーサンと二人で出掛けると、必ずと言っていい程女性に声を掛けられる。今日も午前中の一時間だけで三人。

カフェで休憩している今も、ウェイトレスとの話が終わらない。俺は頬を膨らませて、コーヒーの入ったカップを音を立てて置き、見るからに不機嫌な態度を取ってみせる。それに気付いたイーサンは、ウェイトレスとの話を終え、俺の方に向き直った。

「何を怒ってるんです?」

「別に。」

周りを見渡してから、椅子を動かして俺の隣に移動し、頬を突く。手を払うと、大袈裟に痛がって見せるイーサンに、更に苛ついてしまって、俺はそっぽを向いた。

「ジェイク、俺は何も思ってませんよ。」

「でも、ニコニコしてたじゃん。」

「店員に話しかけられたら、笑って答えるに決まってるじゃないですか。」

それはそうだ。そうなんだけど。

あんまり愛想良く、しないで。」

思わず口に出してしまい、はっとして赤くなってしまった。ちらりとイーサンを見ると、ニヤリと悪い顔をしている。ふーん、と納得した様子で、俺の手を摩る。指の間をくりくりと捏ねられると、ゾクゾクと背中に快感が伝わる。

「ヤキモチですか?」

「違っ、そんなんじゃ、」

「でも、真っ赤ですよ。」

指摘され、必死で顔を隠したが、それがかえってイーサンの欲情を煽ったらしい。

キスしてもいいですか。」

「や、やだ。」

こんな大衆の面前でそんなことする程、俺は肝が座っていない。それでも、近付いてくるイーサンの顔から目を逸らせないでいると、唇が少しだけ頬に触れた。

満足そうに笑うイーサンが腹立たしくて、ぽこぽこと殴るが、笑顔は絶やさない。

「そんなに怒らないでくださいよ。向かいの雑貨屋に、人気のクマのグッズがあるらしいですよ。」

さっきの女性に聞いたんです、とイーサンは言う。家にある大きなクマのぬいぐるみを思い出しながら、あれの対になるような小さめのぬいぐるみを買って貰おう、と心に決めた。