短編8

「叔父さん!」

卒業証書を持ったまま、叔父さんに抱きついたら、そのまま倒れ込んでしまった。だけど、そんなの関係ない。人目も憚らず、おじさんの顔や首にたくさんキスをする。

大学を卒業した。就職も決まった。叔父さんほどいい会社じゃないけれど、それなりの企業の営業職。花には営業が合うんじゃないかな、という叔父さんの言葉で営業を選んだ。案外緊張もせず、第一志望にすんなり合格した。

叔父さんの会社と、一駅違いなんだ。これですぐに飛んでいけるね。

「おめでとう、花。」

そう言って優しく頭を撫でてくれるので、嬉しくなって手に顔を擦り付けて、ぺろりと舐めた。猫みたいだなあと笑う叔父さん。昔よりも歳をとった叔父さん。あと十年もしたら、定年退職してしまう叔父さん。でも、歳を重ねるごとに色っぽくなっていく、そんな叔父さん。

「熟成肉がいい具合だぞ。」

花の獲って来てくれた肉だ、と言うおじさんの言葉に、お腹が空いたなあ、と呟くと、焼肉とステーキどっちがいい、なんて聞くものだから、大きな声でステーキ!と叫んでしまった。

「花はよく食べるな。」

「食べ過ぎかな?」

「たくさん食べるのは、良い事だ。」

あの男は随分と上質な肉だったしな、とまた頭を撫でてくれた。いくつになっても、叔父さんに撫でられるのは嬉しい。

「漬け込んでいたホルモンも、きっといい具合だろう。」

ああ、ホルモン。叔父さんはホルモンが苦手だけど、俺が好きだからといつも特別に漬け込んだやつを作ってくれるんだ。コリコリして、でも柔らかくて、とても美味しい。

「叔父さん。」

名前を呼ぶと、なんだ、と首を傾げて優しい目で俺を見てくれる。流すような、綺麗なその目。欲情を奮い立たせるその目が大好き。

「夜はゆっくり、その、いいかな?」

言葉に詰まりながらそう聞くと、おでこにキスをしてくれた。

「花が満足いくまで、付き合うよ。」

もう勃ってしまったなんてのは、絶対秘密だ。