短編.5

美味しいお肉が食べたいなあ、と花が突然言い出した。肉はいつも食べているだろう、と返すと、にっこり笑って私にすすすと近寄る。

「好きな人のお肉って、特別美味しいんだって。」

ああ、そう言う事か。

「叔父さん、いつもなんだか甘い匂いがするもの。」

そう言って、私の手のひらをすんすんと嗅ぐ。猫の様だ。そのままべろりと舐めると、中指を口に含んだ。舌で器用にそこを弄ぶので、私は花の口腔内で指を動かし、上顎を擦り、喉奥を引っ掻いてやった。

けほ、と少し咽せた後に、蕩けた顔を上げ、その目で私に訴える。

食べたいのか?」

こくりと頷く花。仕方が無いので、服に隠れて見えないであろう脇腹を差し、ここならいいぞ、と言うと、花は私を押し倒し、服を捲り上げ噛み付いた。痛くない、と言えば嘘になるが、花に食べられるならいいか、と納得してしまう自分も、なかなかにこの子を甘やかしてしまっているな、と思う。

仕方がないのだ。可愛い花は、とても利発で、良く出来た子だ。何も教えなくても人肉の解体を見て覚えたし、本で調べながら料理も出来るようになった。勉強も、そこそこ頑張っている。少しくらい甘やかしたって、バチは当たらないだろう。

ぽっかりと空いた脇腹の穴を手で確認する。思ったよりも齧り取られたな。花は、私の肉を口の中でゆっくりと味わいながら、飲み下した。

美味しい。」

それから滴る血を舌で舐め掬い、一滴残らず味わった。

血のついた唇で、私の首筋にキスをすると、そのまま噛み付く。歯形が付く程強く噛まれたが、食べる事はしなかった。

「一気に食べたら、叔父さんが無くなっちゃうから。」

そんなのは嫌だからね、と笑いながら口付ける花の顔は、とても猟奇的で、魅力的であった。