3.


「この死体の処理を頼む。」

持ってこられた死体を見て、私は心底がっかりした。

処理に困った死体の後片付けを頼まれるのは、よくある事であり、それには慣れていたが、こちらは基本的に人肉を食べ物として販売しているのだ。あまりに悲惨な状態の死体は、困る。

所謂ヤクザの組長らしき人物から引き取ったそれは、数々の拷問の跡があった。骨は砕かれ、タバコの焼き痕。舌は切り取られている。舌は大層美味いのに、と状態を見ながらため息をつく。腕には無数の注射の痕。これでは内臓は使い物にならないだろう。

50か?」

70。」

「高すぎるだろう。」

「販売できない肉の処理をするんです。それくらいいただいて、当然でしょう。」

組長は、渋々下の者に金を出させ、支払った。

「跡形もなく、頼むぞ。」

「お任せ下さい。」

金額を確認し、頭を下げ、死体を家に運んだ。

 

「おかえり叔父さん!」

玄関を開けると、花が元気よく飛び付いてきた。寂しかったよ、と私の胸に頭をぐりぐりと擦り付ける様は、まるで飼い主の帰宅を待ち侘びた犬のようだ。私は花の頭を優しく撫でる。すると花は、私の目をじっと見つめ、口を突き出した。キスを強請っているのだ。唇に軽く触れると、笑顔になる花。叔父の贔屓目だとしても、やはり可愛らしい。

私と花は、どうやら恋仲にあるようだ。というのも、私はそこまで深く考えてはいないが、花は私をそういう対象として、見ているらしかった。毎日のようにくっ付いてきては、おじさん大好き、と耳元で囁きながら、私を抱くのである。それもまた、肉を獲って来る時のような乱暴さはなく、優しく、しかしまだ覚束ない手付きで。それがまた、愛おしく、可愛らしい。

「今日は少し仕事をしなければいけなくてな。」

「俺、待てるよ!だから、横で見ていても、いい?」

「勿論だ。」

花の頬に触れると、私の手を取りへへ、と笑った。

死体の入った麻の袋を地下室に運び、中身を逆さに吊す。死んでから時間が経ってしまっているのだろう。刃を立てたが、硬くてうまく削れない。本当に、酷い肉だ。いくら私でも食べたいとは思えない。

「硬い?」

動きの止まった私を見て、花が覗き込んだ。

「俺が、取り敢えずバラバラにしようか?」

「頼む。」

私より、花の方がずっと力がある。鋸を出してきて、切断してくれた。その間に、私はコーヒーを一口。いつも花が淹れてくれる、インスタントコーヒー。これが、やけに美味い。以前、隠し味を聞いたところ、愛だよ、と照れた後に、チョコレートをひとかけ入れていると話してくれた。花が殺した両親が、いつも酒の後に飲んでいたらしい。弟夫婦は、花を虐待するような最低な奴らだったが、いい知恵を授けてくれたようだ。お陰で、私は花の淹れたコーヒーが一等好きになった。

「出来たよ!」

汗を拭いながら、ふう、と一息ついた花は、鋸を放って私の元に来た。死体は見事にばらばらになっている。丁寧な事に、内臓まで取り出してくれたようだ。流石は花。仕事が出来る。

「有難う。やっぱり、花はいい子だなあ。」

頭を撫でて褒めてやると、嬉しそうに抱きついた。花の股間が少し膨らんでいる事に気付いたが、後でたっぷりな、と言って、バラバラになったものを肉挽き器に突っ込む。こういう硬い肉は、迷わずミンチにしてしまったほうが良い。訳あり品として、売るつもりだ。汚らしく食べる気にもならない内臓は、焼却炉へ運ぶ。人の体で食べられないところは、燃やしてしまった方が安心出来る。私が殺したわけではないが、変に疑われても信用問題に関わる。今後の仕事に支障が出ては困るし、何より私自身人肉が食べられないのは嫌だ。

 

夕食、花にはストックしてあった良い肉を出したが、私は味見ついでに先程の肉でミートボールスパゲティを作った。ミートソースで赤くなった肉団子を一口。味付けはしっかりしたはずだが、やはり硬いし、なんと言っても臭い。死んでから時間が経ったのと、クスリ漬けにされたせいだろう、アンモニア臭が口の中で漂い、私はすぐさま吐き出した。とても食えたもんじゃない。訳あり品で売るにしても、少し考えなければならない。臭いを取るために、少し酢につけるか。

「不味い?」

肉を吐き出した私を見て、花は心配そうに尋ねた。私は花の頭をくしゃりと撫でて、大丈夫だよ、と言った。

どうしても気になったのか、花は私の文の肉団子を一つ、口に運んだ。

「何これ、酷いね。」

吐き出すことはしなかったが、数回噛んで顔を顰めながら、ごくりと飲み込んだ。

「俺の分をさ、半分こしようよ。」

おじさんにも美味しいお肉、食べて欲しいなあ、なんて言うものだから、花が可愛くて仕方ない私は、抱きしめて、頬にキスを落としてやった。くすぐったそうに笑う花だったが、何度かキスをするうちに、黙り込み、股間を隠すようにして私を見上げた。

「ご飯、食べてから、だよね?」

花の肉は、まだ3分の1ほど残っている。そうだな、と返事をすると、花は残りをあっという間に平げ、私を押し倒すような形で覆い被さった。

今度は花から、頬ではなく、唇にキスをする。拙い舌の動きで、覚えたてのディープキス。そこからは花の食べていた肉の味がした。とても美味しい。口を離すと、涎が糸を引く。勿体無くて舐めとると、花は顔を真っ赤にしながら、照れ臭そうに私のシャツに手をかけた。脱がしながら、私の胸の突起に触れる。条件反射でピクリ、と反応するそれは、わずかに膨らんでいた。

「舐めて良い?」

頷くと、花は小さな赤ん坊のように、それに吸い付く。母親から愛情をかけられなかったせいなのか、花は胸を弄るのが好きだ。好きなだけ吸わせてやる。私自身は、そこまで気持ちが良いわけではないのだが、セックスは、痛い事さえしなければ、花の好きなようにやらせてやる、と決めている。多感な年頃だ。回数を重ねて学んだ方が、良いに決まっている。恋人というよりは、保護者の気分だ。

私は花のズボンに手をかけ、窮屈そうにしているそこを、ジッパーを下げて楽にしてやった。勢いよく飛び出したそれは、もうすっかり勃ち上がっており、先走りでてらてらと光っていた。手で包み込んで軽く扱いてやると、花は気持ちよさそうにびくり、びくりと身体を震わせる。

「叔父さん、やだっ、叔父さんっ、」

「イっていいぞ。」

「や、だぁっ」

何が嫌なのか、一度手を止めると、花は肩で息をしながら、私のズボンをゆっくりと降ろす。

「叔父さんの、ナカがいいっ、」

可愛い甥っ子は、私の中が好きらしい。私の体力がない分、毎日はしてやれない。その為、出来るときはなるべく挿入する事を受け入れるようにしてやっている。

「花、おいで。」

そう言うと、花は私の穴に自分のものを当てがい、ゆっくりと、奥深くまで挿入した。ふう、吐息を吐き、もうすでに気持ち良さそうな花。舌を絡めてキスをしてやると、それに伴って腰を動かし始めた。花のものは、大きさはそれほどでもないが、意外に長さがあり、私の気持ちの良いところをごり、と突いてくれる。叔父である手前、なるべく喘がないようにはしているが、やはり、気持ち良いものは気持ち良い。時折声を出すと、花は興奮して動きを速める。

「叔父さんっ、中、良いっ?」

「たっぷりやらせてやるって、言っただろう。」

そう言って耳を撫でてやると、花は身体を痙攣させて、私の中に吐精した。

しかし、花はまだ若い。もう一回、と言って体勢を変え、元気なままのもので、私の奥を突き続ける。

「叔父さんっ、きもちいっ、叔父さんも、気持ち良い?」

「ああ。」

2度目の精を吐き出すと、花は私にもたれかかり、胸に顔を埋めて、叔父さん大好き、と呟いた。私は花の髪を優しく梳かしながら、快楽に溺れた花を愛おしく思った。

 

「花はやっぱり良い子だなあ」